【塩屋的住環境のつくりかた】#5 建築家を選ぶコツ?
2026.1.28

記:小山直基(塩屋的住環境の家、小山の家)
先日、雑誌『ミーツ』の取材を受けた際に、「建築家をどのように選んだのですか?」と聞かれました。建築雑誌を立ち読みしたり、作品集を眺めたりするくらいには建築(というか家)が好きですが、専門的に学んだことはなく、そもそも「建築家に家を設計してもらう」なんて贅沢なことが自分の人生に起こるとは思っていませんでした。
ここからは、橋本健史建築設計事務所(THAW)に設計をお願いした経緯をお話します。
今回の「塩屋的住環境の家」の改修では、神戸市の「建築家補助金」を活用することにしました。この補助金は、以前に自宅離れのプレハブ改修で活用したものです。申請条件には「建築家と協働して地域課題に取り組むこと」があり、あらためて「誰と一緒にこの古家改修プロジェクトに取り組むのが良いか」と考えることになりました。
まず第一に、欠かせない条件としては「私の活動を理解してくれる人」です。古家の活用やリノベーションに価値を見出し、その過程に魅力やパッションを感じられる人でなければ、このプロジェクトがうまくいく想像ができません。また、欲を言えば「旧グッゲンハイム邸」や「シオヤプロジェクト」といった、これまでの塩屋の取り組みにも理解があり、その延長線上にある今回の「塩屋的住環境の家」プロジェクトに共感してくれる人であれば、良いグルーヴが生まれるはずだと思いました。
次に重視したのは、「塩屋在住、もしくは塩屋に縁のある人」です。これは、これまでシオヤプロジェクトで作家やクリエイターと一緒に何かをやるときに常に大切にしてきた基準でした。まちの特性や文化を共有している人であれば、場違いな提案が生まれにくく、土地に寄り添った面白いものが自然とアウトプットされるという経験があります。さらに欲を言えば、「塩屋在住」であることです。これは単に地元贔屓というより、現場でのコミュニケーションが格段にスムーズになるからです。移動の交通費も節約できますし、ちょっとした買い物のついでに現場に寄ってもらえたり、大工さんと顔を合わせて話ができたりする。何より、自分が住んでいるまちに対して無責任な提案をする人はいないはずです。
最後に重視したのは、「私がリスペクトできる人」です。403architecture[dajiba]として橋本健史さんのことは、以前から建築雑誌などで見て、「格好いい活動をされている方だな」と思っていました。その後、ご家族で塩屋に移住され、建築家である奥さまの関野阿希子さんがシオヤプロジェクトに参加してくださったことをきっかけにご縁ができました。阿希子さんは橋本健史建築設計事務所(THAW)でパートナーを務めておられます。そうした縁もあって、2023年にはシオヤプロジェクトが企画した展示に、THAWに空間関与として参加をお願いしました。

とにかく予算がほとんどない条件のなかで、THAWは面白い発想を形にしてくれました。驚いたのは、以前に、私たちが塩屋の建物からレスキューしてストックしていた古材の使い方でした。古材の柱を何本も束ね、ステンレスの結束バンドで留めて、なかったはず場所に階段や廊下を仮設的につくり、部屋と部屋、部屋と外部をつなぐ——既存の空間に斜め上のアイデアを落とし込むその発想は自分には到底思いつかなかないものでした。
また個人的な欲を言えば「できれば女性がいい」という希望もありました。もちろん性別で絞るつもりはないのですが、生活に寄り添う視点、小さな気づきや配慮といった面では、女性の持つ感性に助けられることが日常的に多いと感じているからです。実際に、私の家でも妻がキッチンや家全体のちょっとした改善点によく気づいてくれます。住環境を心地よくしていくためには、そうした「日常に根ざした小さな視点」こそが大事だと思っています。
結果的に、すべての条件に当てはまる建築家に出会い、今こうして一緒に改修を進められています(既に宿泊施設として運営しています)。予算の制約や建物の状態によって、想定外のことも多く一筋縄ではいきませんでしたが、目指しているイメージとのずれは大きくなく、やり取りもとてもスムーズでした。
最後に、先に触れたシオヤプロジェクトの展示の際にいただいた、THAWのプロフィールの一文を紹介して締めくくります。
「場所の可能性を丁寧に観測し、ありえたかもしれない“現在”をデザインする」
まさにそれを体現してくれる建物になっていると思って、一緒に協働できたことがとても充実した体験でした。
