【塩屋的住環境のつくりかた】#6 なぜ塩屋に宿泊施設ができなかったか
2026.2.10

記:小山直基(塩屋的住環境の家、小山の家)
なぜこれまで塩屋に宿泊施設がなかったのか。
今回、自分で準備を進めてみて、その理由がわかりました。
それは、用途地域による制約です。用途地域とは、自治体が定める「まちの見えない設計図」です。どこにどんな建物が立ち、どんな暮らしが展開されるのかを静かに方向づけるもので、「静けさを守る場所」と、「にぎわいを受け止める場所」を区分しながら、地域にふさわしい環境が保たれるように整えられています。その区分のひとつとして、住居専用地域では原則として宿泊業の営業が認められていません。
実際に塩屋の用途地域を見てみると、下図のとおり、まちの大半が住居専用地域で占められていることがわかります。

塩屋で宿泊業が可能なエリアは、具体的に次の三つに限られます。
国道2号線沿い(第二種住居)
駅前周辺(近隣商業)
塩屋丸山線沿い(第一種住居)
これだけでも、場所選びのハードルは相当高くなります。
さらに私の場合、国道2号線沿い(第二種住居)や、商店が集まる駅前の近隣商業エリアは、求めている宿の雰囲気とは方向性が異なるため候補から外しました。
すると残るのは第一種住居だけになります。ただ、第一種住居も駅から離れるほどアクセスが悪くなり、単に「可能なエリア」であっても宿事業として成り立ちにくい場所になります。
何度も歩いてきた塩屋のまちですが、「用途地域の区分」と「宿として成り立つか」を同時に意識して歩き回るのは、まったく別の体験でした。住宅地図を印刷し、宿泊業が可能なエリアを蛍光ペンで塗り分け、そのうえで「ここで宿をやりたい」と思える場所を、一軒ずつ丁寧に確かめていきました。

そうして見つけた候補の建物が2軒ありました。しかし、建物を外から確認するだけでは、それらが空き家なのかどうかもわからないし、仮に空き家だったとしても貸してもらえるのか、売ってもらえるのかは別の話です。ふつうは、すでに市場に出ている賃貸物件や売買物件の中から探すもので、建物から探すというのは、正直かなり無謀なやり方です。それでも、法務局で所有者を調べ、お手紙を出すところまではしようと思っていました。
そんな中で、まさか目星をつけていた建物のオーナーから相談をいただけたのは、本当にラッキーでした。塩屋に全戸配布した自分たちの活動パンフレットがきっかけだったので、まわりまわって届いたご縁のようにも感じました。思いがけない巡り合わせで、この宿の計画は静かに動き始めました。