海と山のすきまの塩屋的住環境特集

【塩屋的住環境のつくりかた|お店編】魚一

2026.8.31

photo : yuto yamashita

一日のうち何時に訪れても、買い物をする人の姿が見られる、駅前の魚屋さん[魚一]。店頭には中央市場で仕入れてきた全国の鮮魚が並ぶほか、朝市と昼市で仕入れた地元の鮮魚が並ぶ。垂水や淡路、須磨の漁師さんが採ってきたものには「地物」や「垂水産」、昼競りで仕入れた「ひる網」、前の浜で獲れた「前どれ」や「浜もの」というシールが。塩屋住民の暮らしには、海に近いこの地域ならではの恵みが当たり前のようにある。

「創業して100年以上は、経ちますね。初めは仕出し屋さんでした。そのあと祖父が魚屋さん、祖母が寿司屋を営んで、3代目になる現在は魚屋一本です」と、中村さん。最近は鮮魚だけでなく12時になればお寿司、15時頃にはお刺身が登場。他にも「自家製さわらの味噌漬け」や焼き魚、「あゆの唐揚げ」「かますの南蛮漬け」など、新鮮な魚料理が多くの家庭の食卓に並ぶよう、次々と惣菜メニューが並んでいく。

夕方になると、仕事が終わって塩屋駅に帰り着いた人たちが、吸い込まれるように[魚一]に入り、目を輝かせながら選ぶ光景が。近隣で働く人の中には、休憩中に「今日のひる網は何かな?」と買い物に来る人もいる。そして[魚一]に虜なのは住民だけでなく、もちろん塩屋で同じく店を営む店主たちも。[ミツワヤ]では「いわしのフライ」、[しろちゃん]では「サバ定食」、塩屋の飲食店が揃ってメニューに[魚一]の魚を使っている。上質な魚が並んでいるという信頼があるからこそ、と言えるだろう。

そしてもう一つ[魚一]だからこその魅力がある。それは、丁寧に魚を捌く大将の職人技によって生臭さが生まれず、魚本来の味わいを存分に楽しめるということだ。

「スーパーでも、もちろん魚は買えるけど、やっぱり『浜もの』や『前どれ』をお客さんへ届けられるのは、うちならでは。最近は魚がとれなくなってきているけれど、これからも季節の魚や地元の魚を食べてもらえるように、変わらず続けていきたい」と、話してくれた。

獲れたての「ひる網」の魚を買いたい人は、13時頃が狙い目だ。豊富な種類と高い鮮度で迎えてくれる[魚一]、魚料理を存分に楽しむ贅沢と喜びを、私たちに思い出させてくれる。