【塩屋的住環境のつくりかた|お店編】八百石
2026.8.31
photo : yuto yamashita
お店の外には野菜が並び、青果店か……?と見せかけて、中に入るとそこは商店なのか、はたまた寄り合い所なのか?と思考を巡らすワンダーランドが広がっている。100年以上に渡って家族で営まれてきた[八百石商店]は、現在4代目の森本美紀さんが店主を務める。野菜や果物をはじめとした食材や、お菓子にお酒、日用品まで揃うよろづ屋として、塩屋の移り変わりを見つめ、支えてきた。「昔は、ジェームス山の外国人居住地にも、よく御用聞きに行っていたね。私は18歳の時に手伝い始めたから、もう50年以上。やりすぎたわ〜(笑)」と話す美紀さん。すると店の奥からは、賑やかなおしゃべりが。現在16時。今日も常連さんたちが、お酒を片手に集っていた。
「角打ちって言うんかな。おじいちゃんの時からやっていて。ほんまの立ち飲み。当時は一升瓶を並べていて、会社帰りの人がコップ酒をきゅっと飲んで帰って行った。今も冷蔵ケースから自分でお酒をとってきて、飲めるのよ。棚にあるちくわとかを買って食べてもいいし、何を食べたか何杯飲んだか自己申告制。そういうシステムなん、昔から」
時には店頭に並ぶ商品でなく、食べ物を持ち込む人も。美紀さん曰く「うちはなんでもOKの店やねん」。例えば[三ツ輪精肉店]の焼き豚を持参するお客さんの姿。「これ美味しいから、食べ!」という声が、店内に響く。この誰でも何でも迎え入れてくれる雰囲気に足を踏み入れると、最初はものおじしても、一気に溶け込み「ちょっと一杯」という気持ちに誰もがなってしまうだろう。この空気の所以は、まさに明るくおっとりとした美紀さんが「なんでもあり」と言いつつ、みんなを見守っているからだ。夏には自宅から蚊取り線香を持ってきて、立ち飲みを楽しむ人まで出現。愛すべきこの場所で過ごす術をみんなが考え、通っている。
角打ちには塩屋住民の年長者だけでなく若者だって、もちろん参加。[八百石商店]を集合場所のように、気楽に集まり気楽に帰るお酒好きの面々には、地域の店主たちの姿も。誰もが一息つける場所であり、日常の私をちょっと隅に置いてくつろげる場所なのかもしれない。「みんなの家」のような[八百石商店]は、初めて塩屋に来た人へもきっと、「おかえりなさい」という空気で迎えいれてくれるだろう。