【塩屋的住環境のつくりかた|お店編】三ツ輪精肉店
2026.8.31
photo : yuto yamashita
厳選された黒毛和牛が食卓に並ぶ塩屋の暮らし。その背景には、1949年創業という歴史を誇る[三ツ輪精肉店]の存在がある。2代目の大橋さんが、父親からお店を継いだのは、約50年前のこと。当時はまだ十代。「継ぐ気はさらさらなかった」という大橋さんだが、長年市場の競りへ通って培った目利きによって仕入れたお肉や焼き豚、ローストビーフは、地元の人へおいしいものを届けようと向き合ってきた真摯な姿勢を感じる逸品だ。大橋さんが、お店を手伝いはじめたのは高校生の頃。戦後間もない塩屋にあったお米の配給所の、すぐ近くで父親が開店した[三ツ輪精肉店]の御用聞きとして、近くのジェームス山へ自転車で配達するところからはじまった。「いい素材の見分け方を、厳しい親父に仕込まれて。親父が亡くなった頃、弟はまだ中学生、妹は小学生。僕しか継げるやつがおらんし、2代目として必死でやってきたわ」と話してくれた。
大橋さん曰く、美味しいお肉の見極め方は牛の産地によってもさまざま。腿の張り具合はどうか、お腹はよく引き締まっているかなど、各部位を丁寧に見極め判断をしている。「店を引き継いだ頃はまだ若かったから、競り場で出会った先輩たちからも、目利きの仕方を教えてもらった。昔は垂水区だけで28軒は精肉店があったからね。今はもう10軒以下になったと思うけど」
そんな[三ツ輪精肉店]のメニューの一つに、塩屋住民たちが愛してやまない「焼き豚」がある。銘柄豚を使った自家製の「焼き豚」は、夜のおかずにお酒のおつまみにと、あっという間に売り切れてしまう。時には、焼き豚のために道を駆けていく人の姿も!
「焼き豚は、兄弟子に学んだもので僕の代からはじめた。3〜4日間程度漬け込んで、炭火で焼きあげたもの。炭火だからこその高温が、うま味をぎゅっと凝縮するわけ」。ロースとモモ、バラの3種類を手がけているけれど、中でも争奪戦なのはバラ。炭火で焼くことで余分な油分が落ち、残った良質な脂身は、口に含むと優しい甘みとともにとろけていく。
「本物を出していれば、絶対みんな来てくれるという自信がある」と語る、大橋さん。メニューに困った時も、お肉のおいしさを最大限に引き出すメニューとアイデアをくれること間違いなし。